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SS Part3-1 奉仕少女セツナ編

                                         SS Part3-1  奉仕少女セツナ編

                                          

                        画像出展:SEGA COJ公式Web SPECIAL|CODE OF JOKER

 好きなのに気持ちを伝えられない。その苦しみが皆さんにはお分かりだろうか。今僕はその苦しみを経験している。

 その相手は、同じクラスのセツナちゃん。いわゆるドジっ子だが、どこか憎めず、性格も明るく、そんな彼女を慕う人間も多い。それに加えてこのかわいさ。彼女の前ではどんなものもその魅力が薄れてしまうほど彼女はかわいい。そんな彼女に僕は思いを寄せていた。

 でも、高嶺の花なのはわかっている。彼女と話さないわけではないが、そんなに仲がいいわけでもない。彼女にとって僕はただのクラスメートでしかない。そんな僕が彼女に言い寄ったって玉砕するのはわかっている。それならば傷つかないだけの方がまだましだ。僕はそう自分に言い聞かせていた。

 そんなある日、僕は放課後にやらなければならないことがあったので、かなり遅くまで残っていた。外はもう暗い。昇降口に近づくと、雨の音が聞こえた。今日はそんな予報じゃなかったのに…と思ったが、こんな時のためにいつも折り畳み傘を持っていた僕は、外に出て、傘を差した。

 すると、昇降口の外側で、誰かが立っていることに僕は気づいた。よーく見ると、その人影はセツナちゃんのものだった。僕が、「傘ないの?」と聞くと、彼女は「うん」と答えた。本心は、一緒に入って帰りたいとこだったが、そんなことも言えない。傘だけ彼女に渡して僕は傘なしで帰ることも考えたが、なんだかキザっぽいからどうしようかな、と悩んでいると、

「ごめんっ傘入れてちょうだいっ。家すぐだからさ。」と彼女が言った。

 僕は耳を疑って、「え?!」と聞き返すと、彼女は「だめ・・・?かな?」と言ったので「そんなことないよ、いいよ」と、平静を装ったが、もう僕は天にも昇る気持ちだった。

 折り畳み傘が小さかったので、僕はしばらく彼女を濡らすまいとして傘を持つ手以外は傘からはみ出しながら歩いていたが、「そんなに離れてたら濡れちゃうよ。もっとくっついて歩こうよ。」と彼女に言われ、その通りにした。

 彼女とこんなにくっついて歩くなんて、夢にも思わなかった。手汗がヤバい。と言うか全身から汗が出てくる。雨で濡れたんだか汗なんだかもうわかんない。汗臭くないかがすごく心配だった。

 でも、僕の鼻をくすぐったのは汗のにおいではなく、彼女のシャンプーの香りだった。甘いけど、さわやかなとってもいい香りだった。これが女の子のにおいか・・・。なんて考えて鼻の下を伸ばしながら歩いていると、

「ここらへんでもういいよ。あとは走って帰るから。今日はありがとね。」と彼女が言った。僕は言葉が見つからず「お、おう」としか言えなかった。夢のような時間は終わってしまった。時間にすれば20分ほどだが、僕には、5分もないように感じられた。

 その夜、僕はもう彼女のことで頭がいっぱいだった。忘れようとしても、彼女のあの顔、そしてあの香りがよみがえってくる。もう何も手につかない。すっごい胸が苦しい。恋ってそういうもんだってのは聞いてたけど、本当にここまで苦しいとは思ってもみなかった。

 そんな感情と葛藤していると、僕のスマホにLINEが届いた。誰からだろう。知らない人からだった。メッセージには「今日ありがとね!」とあった。全然身に覚えがない。迷惑メッセージの類か?それか人違いか?そんな風に考えていると次のメッセージが来た。

 「ごめんごめん、名前入れてなかった。セツナだよ!」

 !!!!!? 僕は一瞬状況が呑み込めなかった。続いてメッセージが来る。

 「アタシそういえばOO君とあんま話したことなかったよね?今日アタシが濡れないようにOO君がはみだしてたの見て、結構優しいんだなって見直しちゃった。せっかくだからLINE友達になろうよ!ごめんね、他の男子にOOくんのID聞いて勝手にLINEしちゃった❤」

 何ぃいいいいいいいいいいいい、ハートだとぉおおおおおお!?

 僕は一瞬とてつもない期待をその一文に抱いたが、風の噂で「女子がハートを使ったからって脈アリだと勘違いしないほうが良い」と聞いたのを思い出したので、冷静になれた。

 僕は、とりあえず「おうっ、よろしくね✋」とだけ送った。そのあと、少しだけ彼女と会話をして、LINEを終えた。

 もう僕は一生分の運をここで使い果たしてしまったのではないかと思った。あれほど手の届かないところにいた彼女が、こんなにも近い存在となったのだ。もう僕は死んでもいい。それほど幸せだ。今までくすぶった青春を送ってきた僕にも、ようやくこの時が来たのだ。心底嬉しかった。

 初めて、明日の学校が楽しみになった。