hummer-jackのブログ

不器用な漢のブログでございます・・・

SS Part3-3 奉仕少女セツナ編

 ついに日曜日になった。僕は午前中の間に甚兵衛を用意し、髪型も初めて自分でアレンジしてみたが、キモさに磨きがかかっただけだったので、そのままの髪型で行くことにした。

 僕は絶対に遅れてはいけないと思い、集合時間の40分も前に来てしまった。当然彼女はまだ来ていない。僕はすることもないのでとりあえずコンビニでジュースを買った。勝ったは良いが、緊張のせいか全くのどを通らない。無理して飲もうとしたら変なところに入ってむせてしまった。一体僕は何をしているんだと思っていると、もう約束の時間になっていた。でも、彼女はまだ来ていない。一瞬「あの会話は夢だったのか?」と疑ってしまったが、そんなはずはないと自分に言い聞かせ、彼女を待った。

 5分ほど経って、こちらに走ってくる人がいるのに気づいた。最初は誰だったかわからなかったが、そばまで来て初めてそれがセツナだとわかった。学校で見る彼女とは全く違っていて、大人っぽくて色っぽさも感じた。髪はいつものツインテールではなくちょっとアクセントをつけたポニーテールのような髪型だった。化粧も少ししていて、チークが彼女の頬を淡いピンクに色づけし、いつもの彼女の数倍かわいかった。

 「ごめんね、遅れて。道混んでてさぁ」と彼女が謝った。僕が、「大丈夫だよ」と言うと、「走ってきたから喉乾いちゃった。それちょうだい。」と彼女が言い、僕の飲んでいたジュースを手に取り、何口かそれを飲んで僕に返してきた。

 僕は、いきなり彼女と間接キスをすることになるとは思ってもみなかったので、少し動揺してしまった。

 一息つくと彼女は、「それじゃ、行こっか。」と言って手を差し出してきたので、僕は「ん!?」と状況が呑み込めずに固まっていると、「ほーら、手繋がなきゃ迷子になっちゃうでしょ!」と言い、僕の手を取った。緊張で手汗がすごいことになっていないか心配だったが、手を放すわけにもいかないので、そのまま歩くことにした。

 祭りの会場の神社の境内につくと、彼女が「ねぇ、なんか食べない?おごるよ。」と言うので、「いいよ、自分で買うから。」と僕が答えると、彼女は少しふくれて「だーめ! アタシ言ったじゃん、お礼におごるって。だからおごらせて!」というので、僕は彼女の厚意に甘えさせてもらうことにした。

 最初に彼女は屋台を見て、「ねぇ、リンゴ飴だよ!あれ食べよ。」と言ったが、正直僕はフランクフルトとかが食べたかったのだが、彼女がせっかく買ってくれるのに文句は言えないと思い、それを食べることにした。しかし、会計をするときに彼女が「あ、ヤバい。」と言うので、どうしたの?と聞くと、「お財布玄関に忘れてきちゃったみたい・・・。」と言うので、しょうがないなぁと思い僕が払うことにした。

 リンゴ飴を買った後、彼女は「ごめんっ、あとで返すからっ。」と言ったが、「別に返さなくていいよ」と僕は答えた。彼女と一緒に居れるだけ。それだけで僕は十分だった。

 しばらく屋台を回っていると、空がパッと明るくなった。花火だ。僕が空を見上げていると、「ねっ、いいとこあるから来て。」と彼女が言い、僕の手を引っ張って、人のいない林の中の少し開けた場所まで来た。「空見てみて」と言われたので僕は空を見上げてみると、とても花火がきれいに見れた。さっきは人が多くてよく見えなかったりしたが、ここならはっきり見える。「ここね、アタシが小さいときにお父さんに教えてもらったんだよ。」と彼女が言う。そっかぁ、と僕が相槌を打つと不意に彼女は「ねぇ、ホントは好きな人とここ来たかったんじゃない?」と聞いてきた。

 僕は目の前に好きな人がいて、「君と来られて良かった」と言いたかったが、そんなことは言えない。今までの関係を壊したくない。そんな僕の臆病さが邪魔をして「んー、僕今好きな人いないしなー。」とわざとすかしてみせた。

 僕が彼女の方を見ると、なんだかちょっと不機嫌な顔をしていた。でも頬が赤くなって目も少しウルウルしているように見えた。僕は、どうしたの?と聞いたが彼女は、「ううん、何でもない。」と言い浴衣の袖で目のあたりを拭いた。

 そうこうしているうちに花火も終わってしまい、祭りも終わりの時刻になっていた。僕は「そろそろ帰ろっか」と促し、彼女を家の近くまで送ってくことにした。いつもはあんなに元気なのに、帰りの道は一言も彼女はしゃべらなかった。なんか悪いことしたかな?と考えたが思い当たる節もなく、そのまま彼女の家のすぐそばまで来てしまった。僕は、「それじゃあね」とだけ彼女に声をかけた。すると彼女は「楽しかったよ・・・。OOくんとお祭り行けて。気をつけて帰ってね。」と言った。なんだか声に元気がなかったが、理由を聞くのも怖かったのでやめた。僕は、ありがとね。とだけ言って、彼女と別れた。

 帰り道ではもう秋の虫が鳴いている。その声の中、僕は自分を責めた。何であの時好きだと言えなかったんだろう。そして何で彼女を傷つけてしまった理由がわからないのだろう。楽しかったはずの夏祭りだったが、何とも言えない終わり方をしてしまった。

 こうして、その年の短い夏は終わった。