hummer-jackのブログ

不器用な漢のブログでございます・・・

SS Part3-2 奉仕少女セツナ編

  次の日から、僕と彼女との関係は変わった。今までかける言葉はあいさつ程度だったが、その日あったこと、勉強のこと、これからのこと、いろいろなことを彼女と話すようになった。そんな毎日に、僕は充実感を感じていた。

 それからしばらくして、ある夏休みの日、僕は学校に運動着を置きっぱなしにしているのに気づいて、取りに行った。その日は特別暑く、学校に行くまでの数十分の道を歩くだけでも、なんだか頭がくらくらするほどだった。こんな日は、すぐに帰って涼もうと思い、自販機でお茶を買って、運動着をもって学校を後にした。

 しばらく歩くと、道端でうずくまっている人がいた。うちの学校の女子の制服を着ていた。「大丈夫ですか?」と声をかけ、そばまで走っていくと、そのうずくまっていた人はセツナであることに僕は気づいた。

 「おい!大丈夫かよ?」と僕は声をかけたが、彼女は「う・・・・う・・」と呻きを上げるだけだった。素人目にも、これはかなり危険な状態だとすぐにわかった。僕は救急車を呼び、彼女の容態を見守った。救急隊員に電話口で「まずは日陰に連れて行って安静にさせてください。そしてできれば水などをかけて、体温を下げさせてください。」と言われたので、近くの木陰まで彼女を背負っていき、持っていたお茶を彼女にかけた。

 少しすると、先ほどよりもわずかだが、意識がはっきりしてきた。そして、「OO君?どうしているの?」と聞いてきた。僕は、事の成り行きを話したが、熱中症で意識が朦朧としているせいか、あまり理解していないように見受けられた。

 数分後、やっと救急車が到着した。とても長く感じられたが、電話してから駆け付けるまで20分ほどだった。彼女は救急車に乗せられ、僕も一緒に乗ることになった。救急車の中で僕は隊員に、「もう大丈夫ですよ。」と言われた。そうは言われたが、まだ僕は彼女のことが心配だった。(あとでわかったことだが、彼女の熱中症は中等度のもので、2、3日の入院でよくなるそうだ。)

 僕は病院に行くまでの間、彼女を見つけた時の状況などを聞かれ、病院についてからは、彼女の治療が終わるのを待った。しばらく待っていると、連絡を受けた彼女の両親が来た。彼女の父親に、「セツナのこと、本当にありがとう。でも、もう帰って大丈夫だよ。あとは私たちがすることだから。」と言われ、本心としては、まだ待っていたかったが、彼女の両親と一緒にいてもなんだか気まずいだけだな、と思い、僕は病院を後にすることにした。

 次の日、僕は彼女のお見舞いに行くことにした。お見舞いと言っても、何を話したらいいんだろう、僕から訪ねて行って、なんだか恩着せがましく思われないだろうか、僕はそんなことを彼女のいる4階の病室までずっと考えていた。

 彼女は6人部屋の入り口側にいた起きていたようだったので、「おう、大丈夫か?」と声をかけると、「OOくん!」と答えた。よかった・・・いつもの彼女の声のトーンだ。僕はようやく安心した。

 彼女は、昨日学校に用事があっていったのだが、すぐに終わる用事だったため、特に何も持たずにに家を出て、結果熱中症になってしまったと自ら説明してくれた。彼女は「OO君が通りかからなかったらほんとに危なかったんだよ!あとで聞いたけど、アタシのことずっと介抱してくれてたんだよね。病院に着いてからも、アタシが出てくるの待っててくれたんでしょ?お父さんが「帰っていいよ」って言ったんだけど、なんだかあまり帰りたくなさそうだったってお母さんいってたよ。」と言った。なんだか僕は急に恥ずかしくなって、黙り込んでしまった。それを見て彼女は、軽く微笑んだ。

 少し沈黙が続いた後、彼女は急に「ねぇ、今週の日曜空いてる?」と聞いてきた。僕は特に用事がなかったので「空いてるよ。」と答えた。すると彼女は、「ねぇ、今回のお礼って言ったらアレだけど、お祭り行かない?アタシがなんかおごってあげる!」と言った。

 もう僕の中では    夏祭り→浴衣→手つなぐ→花火の時にキス     の王道パターンしかなかった。そんなのハーレムアニメや恋愛ゲーだけだと自分に言い聞かせ、いったん落ち着くことにしたが、そんな僕の思考とは関係なく、「うん、行こう!」と即答した自分がいた。断る理由はどこにもなかった。

 彼女は、「じゃあ決まりだね。だったら、あそこのコンビニで6時に待ち合わせしよう!」と時間と場所を指定した。そして僕はそこでの待ち合わせを約束し、病室を後にした。

 僕は必死にニヤけまいと顔の表情を維持しているつもりだったが、病院から出る際に僕の顔が自動ドアのガラスに映ったのだが、自分でも気持ち悪くなるほど鼻の下が伸びきっていた。今の気分を有名なスイマーの言葉を借りて表現するならば、まさに「超気持ちいい!」だった。