hummer-jackのブログ

不器用な漢のブログでございます・・・

シャドーメイジ編 Part1-2

 どーも、最近吐き気がするほど勝てない漢、hummerです(´・ω・`)

 今日の戦績は、7戦5敗と全くダメでした、もう語る気にもなれません・・・orz

 ですので今日は、きのう書いたSSの続きを調子乗って書きたいと思います。昨日の内容をご覧になりたい方は、ここからどうぞ。僕のキモイ一面を垣間見ることができます。

 

 

hummer-jack.hatenablog.com

 

                                            シャドーメイジ編  Part1-2

 その日はもう嬉しくて、たとえ見ず知らずの人に突然殴られたとしても、笑って快く許せるほど気分がよかった。そして今までにない高揚感を感じることができた。なるほど、これが幸せってやつか。僕は僭越ながらこの年で幸せの定義を解いたような気分になった。なんという言葉で表したら良いかわからない。ただこれは言える。とてつもなく嬉しい。

 いうまでもないが、その日は全く眠れなかった。

 次の日、彼女は 特段変わった様子は見せなかった。いつもと同じだった。昨日あんなことがあったから、少しは打ち解けた感じになるのかなと思っていたのだが、そんな僕の希望は打ち砕かれた。

 でも、一つだけ変わったことがある。それは彼女の声のトーンだ。今までの彼女の話すときの声は、女性としては少し低めで、そのトーンの低さが彼女のクールさをさらに際立たせていたのだが、今日の彼女の声は前とは違ってこう・・・少しかわいくなった感じがした。もちろん以前から可愛いのだが。

 授業中も今までと同じく、わからない問題の解き方を教える。ただそれだけの会話だったが、僕はそれだけでもとても楽しかった。なぜならそれが、彼女に解き方を教えるという一見すると特に意味のない行為だったが、僕にとっては少しでも彼女の役に立てているという充実感を伴う、非常に価値のある行為だったからだ。

 こうして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、放課後となった。僕は友達に遊びに誘われたが、今日は用があると言って断った。僕が彼女に、「そろそろはじめる?」と聞くと、彼女は

 「ちょっと待って、みんなが帰ってから・・・」と、言った。

 僕は、その言葉が「二人きりで」 を暗示するものだと即座に理解し、同時に二人きりでしかできないこととは・・・などと下衆な妄想に数秒の間とらわれてしまった。

 数十分の間教室から人がいなくなるのを待った。大袈裟な例え方だが、人生の中にしてみればこの待っている時間は、1パーセントにも遠く及ばないほど非常に微々たるものだろう。しかし、僕にはこの時間が永遠に続くのではないかと思われるほど永く感じられた。

 ようやく皆が帰り、彼女が仕度を始めた。彼女は準備を終え、

 「それじゃ、やろっか」と、言った。

 何気ない一言だったが、こんなかわいいい女子と二人きりになることなど経験したことのなかった僕には、いかがわしい誘いの言葉にしか聞こえなかった。

 ガッチガチに緊張した僕は、「よろしくお願いします!」と、まるで師に教えを乞うかのように一礼をし、彼女の横に座った。すると彼女は、

 「横だと見にくいから正面に座ってよ・・」と、言い、少しいぶかしげな表情をした。

  僕にとってみれば、彼女の正面に座るなど、緊張が度を通り越して心不全で死んでしまうのではないかと思えるほどだったが、断るわけにもいかなかったので座ることにした。(決して嫌なわけではない、むしろ嬉しいのだが・・・)

  彼女の正面に座ると、やはり彼女の顔をまともに見ることができない。それほどまでにかわいい。もじもじしている僕に彼女は

 「早速なんだけど、ここわかんないから教えてちょうだい・・・」と、語りかけてきた。どれどれ、とばかりに見てみると、国語の問題だったのだが、高校生には初歩的な漢字の読み書きだった、僕はそれの読み方、書き方、そして覚え方を教えた。

 すると次に彼女は、読解の問題について聞いてきた。その読解問題の元の作品は、夏目漱石の「こころ」というものだった。この作品は簡単に言ってしまえば、主人公が恋愛と友人のどっちを取るのかを苦しみながら考え、恋愛を優先したがゆえに苦悩し、最後には悲しい経験をしてしまうというものだ。僕はこの物語を授業で読んだとき、こんなことを言ったら漱石ファンに怒られてしまうかもしれないが、なんだか昼ドラを見ているような、ハラハラした感情が湧き上がってきたことを覚えている。この物語を彼女に要約して伝えた時、不意に彼女はこんなことを言った。

 「人を好きになるってそんなに苦しいんだね・・・ねぇ、〇〇くんってどんな人のことすき?」

 僕はキザにも、「君のことが好きだよ」と、言いそうになったが、あいにくそんな勇気と、それに見合うだけの顔面は持ち合わせていない。

 僕はそんな考えを悟られまいと、「そうだなぁ、やっぱり人のことを思いやれる優しい女の子かな?」と、当たり障りのない回答をした。彼女は

 「ふーん、・・・。」としか言わなかったが、なんだか求めてた答えと違うというような顔をしていた。

 そうこうしているうちに、2時間ほど経ってしまい、学校の施錠の時刻が近づいてきていたので、帰ることにした。帰り支度をしているときに彼女は、

 「ありがとね・・・付き合ってくれて・・・また明日も良い?」と、言ったので僕は快諾した。平静を装ってはいたが、内心は天にも昇る思いだった。

 そんな楽しい放課後学習会はしばらく続き、テスト前期間になった。彼女は最初と比べ、かなり力をつけ、僕が彼女に教えてもらうことのほうが多くなった。僕は彼女に、「もう大丈夫じゃない?僕よりできるし・・・」と言った。すると彼女はすこしふくれて

 「続けるかどうかは頼んだアタシが決めるから、勝手に決めないでよ・・・」と、軽く怒った。そんな顔もかわいいなと思いながら「ごめんごめん」と謝った。その日も放課後に勉強し、帰り際に「明日頑張ろうね!」と、僕が言い放つと彼女は少し笑みを見せた。始めて見せてくれた笑みだったので、僕は明日も頑張れそうな気がした。

 次の日のテストは難なく終えることができ、彼女に今日も勉強する?と聞こうとしたときに、急に彼女の周りに数人の女子たちが集まってきた。彼女たちの顔色は明らかに良くない。かなり頭にきているようだった。

状況が呑み込めないでいるとその中の一人が、「ふざけんじゃねぇよ!てめぇなにうちらのことtwitterで晒してんだよ!?なんか恨みでもあるわけ?」と言った。その女子が持っていたスマホの画面には、彼女らがいかがわしいバイト先へアルバイトに行くところを撮った写真と、彼女らへの誹謗中傷が長々と書かれていた。その文面は、荒れたネット掲示板を見慣れた僕でさえ、目を覆いたくなるほどの罵詈雑言で満たされていた。そしてそのtwitterのアカウント名には、Shadow.M の文字。彼女らはそれを証拠に攻めてきたのだった。

 しかし僕の隣に座る彼女は、「やってない・・・」と、言う。しかし彼女らの怒りは収まらず、つかみかからんばかりの勢いだった。その後彼女らにしばらく攻め立てられ、彼女は黙り込んでしまった。良く見ると、彼女は少し涙ぐんでいた。いわれのない罪を着せられ、罵声を浴びせられ、もう耐えきれなくなっていたのだろう。もう僕は我慢できずに

 「おまえらさぁ、やってないって言ってるんだから信じてやれよ!」と叫んだ。自分でも何でこんなことしたかわからなかった。ただ、彼女の泣き顔を見たくなかった。ただそれだけだった。

 彼女らは反論し、「コイツの性格知って言ってんのか⁉うちらのこと見下してるから話さねぇんだろ?」と言った。でも、僕は

 「お前らこそ知ってんのかよ⁉シャドーメイジはなぁ、ただ内気なんだよ!それが災いしてみんなから誤解されてるだけで、ホントは普通の女の子なんだよ!」と言った。

  彼女らは、「そんじゃこのアカ名はなんだよ!?コイツのなまえだろうがよ?」と言った。

  僕は「んなもん知るか!とにかくシャドーメイジはやってねぇ。俺は信じる。」と言った。

 すると彼女らは、「勝手にしろ!」と、捨て台詞を吐き、去って言った。

 こんなに怒ったのは人生初めてだった。彼女たちが去っていくと同時に、僕は力が抜けてしまった。(これは後でわかったことだが、あのtwitterは、シャドーメイジを嫌う他の女子が、彼女をはめようとして書いたものだった。)

 そんな一件があった日の放課後も、僕たちは一緒に勉強した。しばらく会話はなかったが、彼女は急に

 「さっきはありがとう・・・カッコよかったよ・・・」と、言った。

 僕はあまりの出来事に何も言えなかったが、彼女は続けてこう言った。

 「あのね、アタシのことあんな風に言ってくれる人初めてだった・・・。だから・・・すごく嬉しかった。ねぇ、そのお礼って言うかなんて言うか・・・アタシ付き合ってあげる。」

 ッ!!!!!あまりの衝撃に僕は思考が停止してしまった。しばらく何も言えないでいると、彼女は顔を赤らめながら

 「もうっ、これでいいでしょ!」と言いながら、僕にキスをした。

 「キスまでしたんだかあら、付き合ってよね!」と、彼女は言う。強がってはいるが、彼女の頬は真っ赤だ。

 やっぱり僕は何も言えず、うなずくことしかできなかった。そして僕は心の中で思った。

 これが・・・幸せってやつか・・・。

  

                               ~ Fin~