hummer-jackのブログ

不器用な漢のブログでございます・・・

SS Part3-4 奉仕少女セツナ編

 その後も彼女とのLINEのやりとりはあった。LINEの内容も今までと変わらない。でも、祭りの時の怒ってた理由を聞こうとすると、話をそらされてしまった。だから僕はあえて、その話題に触れないことにした。

 夏休みが終わり、登校する日になった。僕は、学校に行ったら彼女になんて声をかければいいのだろう、LINE上では話せてたけど、、いざ面と向かって話すとなるとうまくできるだろうか。そんな不安を抱きながら僕は登校した。

 教室に入ると、まず声をかけてきたのはセツナだった。「おっはよー!久しぶりに会うねっ」と彼女は言う。僕は「おう、おはよう。」とだけ答えた。よかった・・・今までと変わらない。僕は安堵感を感じた。だがそれと同時になぜあの時あんな態度だったのだろうと、疑心と不安が入り混じった複雑な感情が沸き上がってきた。

 その日は特に何もなく終わった。

 次の日、午後に総合の時間があった。何をするんだろうって思っていると、先生が入ってきた。先生は「今日は修学旅行の班決めなどをしたいと思います。皆さんもわかってると思いますが、私たちの学校は12月に修学旅行があります。なので、そろそろ細かいことも決めなければいけない時期に差し掛かっています。」と、話を切り出した。

 僕は先生に言われて思い出した。夏休み前に先生が「夏季休業が終わったらそろそろ修学旅行の班決めをしなければいけませんね」と言っていたことを。行先は京都、大阪、奈良で4泊5日だったはずだ。その間に班での研修があるので、そのメンバーを決めなければいけなかった。

 班決めをし、僕は男4人女2人の班になった。セツナは違う班だった。僕はセツナと同じ班になって・・・などと色々な妄想をしたが、世の中そんなにうまくいくものじゃなかった。

 修学旅行に行くまでの間も、彼女との関係は続いたが、何も進展しなかった。

 そうこうしているうちに、修学旅行の日になった。光陰矢の如しとはよく言ったものだ。一日目は、京都の金閣寺を見に行った。平日だというのにかなり混んでいて、金閣寺を見れたのはほんの一瞬だった。写真も撮ったが、人の頭しか映っていなかった…。

 初日は移動にかなりの時間を使ったので、金閣寺を見ただけで、すぐにホテルに戻った。ホテルの部屋は二人部屋で、同じクラスの男子と一緒だった。僕の好きな漫画で、修学旅行で先生の計らいにより、男女同じ部屋になったというものがあったが、僕は心底それを望んでいた。だが恐らく、そうなったら僕は理性を失うだろう。

 そんな下らない空想をしていた時、僕のスマホが鳴った。セツナからだ。僕はLINEを開くと、そこには「今なにしてる?」とあった。僕は「ダラダラしてる。」と答えると、次の返信は驚くべき内容だった。

 「じゃあ、暇ならアタシの部屋来ない?お話しよっ」

 次の瞬間僕の全身に電流が走った。手がこわばってスマホを持つのも難しい。声も出ない。汗が噴き出る。僕は自分の身に起きたことを理解できていなかった。というより、頭では分かっていたのだが、信じられなかった。女子の部屋に行くなんて、僕の中では神話か伝説のような遠い次元の話だと思っていた。しかし今、自分の身に起きていることは現実だ。僕はこわばる指を必死に動かし「うん、じゃ暇だから行くね。」と平静を装った文章を送ったが、内心はHな妄想でいっぱいだった。

 僕は彼女の部屋に行く前に、シャワーを浴びるべきか本気で悩んだ。しかし、そんなことで悩んでいる自分に恥ずかしくなって、そのまま行くことにした。

 彼女のいる階まで行き、部屋のドアをノックした。「おーい、来たよー。」恐らく僕の声は震えていただろう。彼女は僕の声を聴き、「はーい」と言ってドアのロックを解いた。「いいよ入って」と促されて僕は彼女のいる部屋へと足を踏み入れた。

 なぜだろう、部屋のつくりは同じはずなのに全然違うものに思えた。そしてにおい。なんと表現したらよいのだろう。シャンプーの香り、いわゆる女の子の香りがするのはわかるが、その他になんだか甘酸っぱいにおいがする。そのにおいだけで僕は体が火照ってきた。

 僕が「もう一人は?」と聞くと「あー、OOちゃんは他の子の部屋行ったよ。」と彼女は答えた。  "二人っきり"    僕はそう考えたらますます体が熱くなってきた。

 そんな僕を見た彼女は「どうしたの?顔赤いよ?」という。僕は「なんか暑くね?この部屋。」と言う。すると彼女は「いや今冬だよ。変なのOOくん」と言った。いや、もう何で自分が火照ってるかもわかんなくなってきた。というか緊張しすぎて何話したらいいかわからない。

僕が困っていると彼女は「あーっ、もしかして女の子の部屋来るの初めてで緊張してるの?」という。図星だ・・・。僕は悟られまいと「んなわけあるか!」と強がるが、彼女にはお見通しのようだ。

 その部屋で僕らは修学旅行の話をした。どこに行きたいとか、何食べたいとかいろいろな話をした。でも不思議だったのは、会話が途切れると彼女がなんだかもじもじし始めることだった。だが僕はあまり気にしなかった。

 彼女と話した時間はあっという間だった。もう消灯時間間際だ。そろそろ先生が見回りにやってくる。その前に帰らなくてはいけないので、僕は「じゃあね」と、足早に去ろうとすると、彼女は「また明日も来てくれる?」というのだった。僕は「おう、暇だったらな」と答えたが、心の中では何があっても行くことを決めていた。

 次の日は、京都の散策だった。班ごとに分かれてのオリエンテーリングだった。僕たちの班は、清水寺を出発し、祇園へ行き、新京極を見た後に付近を散策し、ホテルに戻るというルートだった。10時頃にスタートし、順調に進んでいた。

 昼過ぎに新京極に来た時、一人で迷っているうちの制服を着た女子がいた。セツナだった。僕らは、かわいそうなのでセツナをうちの班に入れ、セツナの班と後で合流することにした。彼女は、家の班員に「まったく、セツナはいっつもこれなんだから。」と少しイジられて、セツナも「エへへ、ごめんごめん。」と答える。そんな彼女のしぐさもかわいいと僕は思った。

 その日はセツナが迷子になった以外何事もなく、無事に終わった。

 その夜、僕は彼女の部屋に行った。その日は彼女が迷子になったいきさつについて聞かされた。どうやら行ってみたいお店があって、「後で追いつくから」と言って別行動を始めたのだが、来た道がわからなくなり、スマホの電池も切れてどうしようもなくなってしまったようだった。そんな話をしている時も、セツナは何となく違うことを考えているような、どことなく何かを期待しているような変な感じだった。

 その日も消灯時間間際まで話をして、また次の日来ることを約束した。

 次の日は、朝には奈良、午後からは大阪へと移動し、大阪の本場のお笑いを見てきた。あれほど笑ったことはなかったと思う。

 その夜も、彼女と話をしたが、今日は様子が少し違った。話をしていてもどことなく上の空だった。「どうしたの?」と聞いても、「ううん、何でもないよ」と答える。僕はその雰囲気が、どことなくあの祭りの時に似ていると思った。

 4日目。修学旅行も、実質ここまでと言ってもいいだろう。最後の日はほとんど移動でつぶれてしまうからだ。そんな修学旅行の最後を飾るように、この日にテーマパークへ行くスケジュールが組まれていた。昼前から夜まで、めいっぱい遊んだ。

  その日の夜も彼女の部屋に行ったが、様子がおかしい。なんか怒ってる。話をしてもそっけないし、ずっと下を向いている。僕は「何怒ってんだよ。言いたいことあるなら言えよ」と行った。

 すると彼女は「OOくんいつまで待たせる気なの!⁉アタシずっと待ってたんだよ!」と、声を張り上げた。僕は、「な、何が?」と状況が呑み込めずにいると、「こんなにチャンスあげたのにまだ言えないの⁉OO君アタシのこと好きじゃないの?」と彼女は言った。

 彼女は目に涙を貯めながら訴えかけてくる。泣かせてしまった・・・。女の子を泣かせるなんて、男としてやってはいけないことをした。僕はそう思い覚悟を決め、

 

「好きだよ」 

 

 と言った。だが、彼女はまだ怒ってこう言う。「じゃあ、証拠見せてよ」

 僕は次の瞬間には彼女の唇を奪っていた。もう理性も思考も何もない。本能だけで動いていた。しかし彼女はそんな僕を受け入れるように無抵抗だった。

 とろけそうだった。キスがこんなにも甘美で刺激的だなんて・・・。脳髄まで僕の唇を伝わって彼女の柔らかい唇の感触が到達する。

もう止められない。僕は気づくと、彼女を押し倒してしまっていた。

 すると彼女は僕から顔をそむけ、耳元で「これ以上はダーメ」と言った。僕は「・・・ごめん。」と言って彼女から離れた。すると彼女は頬をピンク色に染め、「そんなに積極的になるなんて思ってなかったよ。でも、ちゃんと証拠見せてくれたね。」と言った。

 しばらく沈黙が続いた後、彼女は、「何ですぐに言ってくれなかったの?」と言う。 僕は、「フラれるかと思って・・・。」というと、「だから彼女できないんだよ!アタシが何でお祭りの時怒ってたかわかんなかったの?」と彼女は言う。僕は「今もわかんない・・・。」と答えた。すると彼女は、「ハァーッ」とため息をつき

 「アタシね、OO君が告るの待ってたんだよ!だからあの時、人気のないとこわざわざ行ったんだよ。アタシの部屋に呼んだのも、そういうチャンスを作ってあげるために呼んだのに、全然言ってくれないんだもん。」と言った。

 僕は謝るしかなかった。しかし彼女は「でもOO君やるときはやるんだね。びっくりしちゃった。」と言うので、僕は恥ずかしくなり、何も言えなくなってしまった。

 もう消灯時間だ。時計の鐘の音が鳴る。僕は急いで帰る。帰る前に彼女が「OO君。好きだよ」と言った。僕も「好きだよ」と言う。まさかこんな言葉を彼女と交わすとは思ってもみなかった。

 僕はその夜布団に入り、喜びをかみしめた。夢じゃない、現実だ。何度も確かめた。こんなに満たされた気持ちになるのは初めてだった。

 次の日、ホテルから出るときに僕は彼女の横を通った。何か話そうとしたが、昨日のこともあったので、恥ずかしくて何も言えなかった。彼女も頬を赤らめるばかりで何も言わなかったが、互いに言いたいことは伝わっていたと思う。

 こうして修学旅行は終わったが、彼女と僕との関係はまだ始まったばかりだ。